Introduction JP

釉薬の種類や焼成方法によって、バラエティに富んだ製造手法が存在するのも多治見タイルの特徴です。手作りのような風合い、温もりと深みを感じさせる色みと質感が特徴的な多治見タイルは、まさに日本の美の象徴とも言えるでしょう。タイルの仕上がりに影響を及ぼすのが、焼成のプロセスです。通常、量産タイルは均一で、安定した仕上がりのローラーハースキルンで焼成されますが、多治見ではトンネルキルンやシャトルキルンを使用します。内部温度を変動させながら20時間以上かけて焼成する特性が、タイルに独自で生き生きとした表情を与えるのです。それに加え、酸化焼成とは対照的な還元焼成を特殊な釉薬と組み合わせることで、日本の伝統的な焼き物(陶芸)にも似た特徴的な風合いと色みを実現することができます。

押出成形

何十年にもわたり使い続けられている「押出成形」は、多治見を代表するタイル製造方法の一つです。真空押出成形機から金型を通して板状に押し出される土を、針金を使って所定の位置で切り取ります。製造のプロセスは数段階に分けて自動制御し、中~大量生産にも対応可能。押出成形は、色や風合いにムラがでるため手づくりのような豊かな表情を醸し出し、日本的な美しさの概念を感じさせます。

乾式プレス成形

現代のタイル産業において、世界でもっとも一般的に行われているのがこの製法です。土を乾燥し、粉状にしたものを大きな金型に充填し、一気に高圧プレス機で押し固めて成形。その後釉薬をかけ、トンネル窯で焼成します。プロセスをフル自動化することにより生産性を高め、均一で安定したクオリティのタイルを量産することができます。乾式プレス成形で作られたタイルは画一的で、普遍的かつクリーンな印象を与えます。

鋳込成形

日本国内では、陶器づくりに使われていた製造法が「鋳込成形」です。まずは液化した土を石膏型のなかに流し込みます。土に含まれる水分を石膏が吸収することで固形化し、割型から外して成形が完了します。この製法は小~中ロットに対応可能で、立体的で複雑な形状に適しています。

湿式プレス成形

伝統的な技法の一つで、現在では多治見以外の地域ではほとんど見られなくなってしまいました。型入れから成形まで、卓越した職人が手仕事で行うため、製造には比較的時間がかかりますが、鋳込成形よりも成形スピードは早く、よりシャープな輪郭を実現します。タイル一つひとつが独自の雰囲気を醸し出すこの手法は、特殊なデザインや極めて小ロットに向いています。