all day place SHIBUYA

year

2022

location

東京, 日本

architect

DDAA

method

乾式プレス成形

volume

使用面積 716m2

photographer

Kenta Hasegawa

元木 大輔さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったのはどのような場所で、その空間内のどのような場所にタイルを用いたのか教えてください。タイルをオリジナルで作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

「all day place shibuya」は、pubの語源である街の「パブリック・ハウス(public house)」をテーマにした、渋谷の日常を感じられるホテルです。1Fには朝から深夜までオープンしているカフェとビアバーが入っており、自由に使える公園のような状態を目指しました。ホテル入り口の1Fの外構から、カフェとビアバー、最上階のスイートルームのお風呂まで同じ素材でデザインするためにタイルを選択しました。

2. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

緑色のタイルは、外構の植物との相性から色を決めました。1Fに入っているデンマークのクラフトビール、ミッケラーから、「デンマークの人から見たら日本を感じる、日本の人から見たらデンマークを感じるデザインにしたい」というリクエストがあり、美濃焼の一つである織部の代表的な緑色を使うことにしました。他の素材との組み合わせであえてそう見えないようにしているのですが、実はとても日本的な色です。

3. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。

釉薬の多様さと奥深さに感動しました。

4. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作をされてみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?

時間はかかりますが、一から色を調整することができ、最終的には外構の床にも使える防滑仕様にも対応していただいた点はとても良かったです。



元木 大輔 / DDAA
2010年元木大輔によって設立。建築、都市、ランドスケープ、インテリア、プロダクト、コンセプトメイクあるいはそれらの多分野にまたがるプロジェクトを建築的な思考を軸に活動する建築・デザイン事務所。2019年、実験的なデザインとリサーチのための組織としてDDAA LAB設立。2021年、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館参加。
dskmtg.com

The North Face Sphere

year

2022

location

東京, 日本

architect

Sawada Hashimura

method

押出成形

volume

使用面積 55m2

photographer

Kenta Hasegawa

橋村 雄一さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

The North Faceの店舗をメインとする新築ビルで、私たちは建築から内装まで一貫してデザインしました。狭小な敷地なので、垂直方向の伸びやかさを感じさせる建築を目指しました。
地下1階から3階までの4フロアが店舗になっていますが、階層ごとの分断を避けるために地下と1階、2階と3階をそれぞれ吹抜けでつなぎ、内装の雰囲気も2フロア1組でまとめました。地下と1階は建物全体を支える基礎として鉄筋コンクリートで造り、内装も大地に由来する漆喰とタイルを使用しています。上階は軽快な鉄骨造で、内装には木を中心に用いています。


2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

建物の最も低い部分である地下の床にタイルを使用しています。この店舗は1階の大半が吹抜けなので、入ってすぐ見下ろすと地下の床が印象的に見えます。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

決して広い面積ではありませんが、マテリアルパレットのなかでも特に重要なものの一つだったので、この場所ならではのものにしようと考えました。

4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

地下の最低部ということで「低きを流れる水」の連想から瑞々しいタイルを目指しました。ベースは白色ですが、55mm角の小さめのタイルのなかに仄かに青みがかったグレーが色ムラとして入ることで、自然なテクスチャーが生まれました。

5. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。

製法の違いによる特徴などを教えていただき、今回目指すものが表現できるまで粘り強くお付き合いいただきました。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

タイルはほかとは異なる時間を生きる素材だと思います。窯のなかで時間を止められた、変化しないものの象徴です。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば、ぜひお聞かせください。

ロンドンに数年間住んでいましたが、帰国してみると日本の街にはタイル貼りの建物が他国と比べてとても多いことに気づきました。私たちは普段から見慣れすぎていますが、実はタイルが日本の街の風景を形成する大きな要素になっているのが興味深いです。

8. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作してみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?

叡智と経験が集積していることはもちろん、TAJIMI CUSTOM TILESのように新しい取り組みにも積極的なところだと思います。



橋村 雄一 / Sawada Hashimura
多摩美術大学 、University of East London (Dip.Arch)にて建築を学んだ後、Tony Fretton Architects 、Carmody Groarke、新素材研究所に勤務。2015年に澤田航と共同でSawada Hashimuraを設立し、建築・インテリア・アートインスタレーションなど空間にまつわる設計を中心に活動している。
sawadahashimura.jp

Bathroom at Salon 94

year

2022

location

ニューヨーク, アメリカ

architect

マックス・ラム

method

鋳込成形

volume

使用面積 34m2

photographer

Clemens Kois

NUMBER SUGAR 表参道店

year

2021

location

東京, 日本

architect

ya Inc.

method

押出成形

volume

使用面積 67m2

photographer

photo: Kenta Hasegawa

山本 亮介さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

手作りキャラメルの製造販売をする「NUMBER SUGAR」の物販店舗です。
キャラメルの持つ要素を店舗空間に取り込むことで、 白い箱に包まれて陳列されるキャラメルにお客様の期待感が増すような店舗空間を目指しています。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

空間の腰から下を埋め尽くすようにタイルを使用しています。
それにより、陳列される商品たちをより魅力的に見せるための背景となり得ると考えたからです。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

商品と同様に自然素材のある空間であって欲しいと考えて「土」から作られるタイルを使いたいと考えました。その時に、カタログからセレクトした既製のタイルを使用して空間を作るのではなく、形状や質感、色味の段階から商品との相性を考えた空間を作りたいと考えたからです。

4.今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

タイル単体に特殊な表情は求めず、タイルが集合した時に、色むらや歪みなどの個体差が見えてくるような表情を持たせたいと思いました。
そこで、規則的なグリッドラインを水平方向にも垂直方向にも敷き詰めることで、そこに現れるタイルの歪みや表情の違いをより感じられるようにしています。
角部分には立体的に成形してから焼成したタイルを使用することで、キャラメルらしい塊としての印象を与えています。それは、手作業で切り出すため完全な矩形にはならないキャラメルの形状と通じます。
ちなみにタイルのプロポーションはキャラメルと同じ比率で決まっています

5. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。

実際に多治見でタイルの製造工場を見せて頂き、制作の過程を理解しながら、幅広く検討を進めることができました。
単純な見た目だけではなく、焼成前の成形段階からいくつかの方法を比較し、協議しながら作っていけたことで
表層的にならずにものづくりができました。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

スペックすることで出来上がる表情が予めわかっている「製品」というイメージでした。
しかし、工夫を加えてなにかを生み出すことができる「素材」であるというイメージに変わりました。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば、ぜひお聞かせください。

振り返ってみると今まで設計をしてきた中で、タイルを意匠の中心において考えたことはあまりありませんでした。
それはデザインされたものを借りてきている印象を持ってしまっていたからですが、今回の経験を通して「タイル」から考えるのではなく、もっと戻って「土」から考え始めるという癖がついたように思います。

8. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作してみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?

多治見には様々な工法に特化した熟練の工場があり、制作したいものに合わせて様々な工場と協力ができる心強い場所だと思いました。同時に同世代の友人達が多治見にもいて、若い世代が新しいモノや場を生み出している印象がありました。


山本 亮介 / ya Inc.
2011年東京藝術大学大学院修了後、スキーマ建築計画に所属。2018年にyaを設立。建築・インテリア・商業空間・家具の設計など、空間に関わる設計活動を行う。
設計過程における場所と人との対話を重要視して空間に反映し、丁寧に筋の通った空間を組み立てていく。近作にNUMBERSUGAR、Sta.、Found MUJI展: いいものに巡り会う旅の会場デザインなど。
ya-a.jp

ARTS & SCIENCE 福岡

year

2021

location

福岡, 日本

architect

ケース・リアル

method

押出成形

volume

使用面積 91m2

photographer

photo: Hiroshi Mizusaki

二俣 公一さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

アーツ&サイエンスの福岡店のショップ計画。すぐそばに大濠公園がある閑静な住宅エリアで、この場所の良さとショップの持つ雰囲気が掛け合わさったようなショップが良いと思いました。今回使用したタイルは、その公園内にあり、同じくショップからほど近い「福岡市美術館」に使用されているタイルを再現したものです。建築家・前川國男氏が用いたこのタイルは、釉薬がかかった表情豊かなタイルで、このエリアの象徴のようでもあり、ショップとの相性も良いと感じました。

2.その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

カウンター背面の大きな壁面のほか、ディスプレイやショーウィンドウの壁として使用しています。また外部の床や、アクセサリーなどの小物をディスプレイするパーツにも同じタイルを用いました。もともとカウンター背面には構造上撤去出来ない壁があったのですが、これにタイルを貼り込むことでショップの象徴的なイメージが作れると考えました。また、壁だけでなく小さなパーツにまで展開することで、よりそのイメージを強く出来ると思いました。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

もともと福岡市美術館に使用されているタイルもオリジナルで作られているのですが、調べたところ、当時作られていた場所では現在製作が難しいことが分かりました。そのような状況の中、サイズはもちろん、色合いや質感などの再現性を高めようと思ったときに今回の製作に至りました。

4. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。

当初、微妙な色の違いを複数の色のタイルを製作することで表現しようとしていましたが、最終的には同じ色の素材から出来たタイルでありながらも、釜の中の温度差によって生まれる色差を利用することになりました。このような、ある種の不完全さというか、計算できないグラデーションはタイルならではの豊かさだと改めて感じました。

5. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

大きな面で用いるときによく感じますが、均一なようで均一ではない素材だと思います。特に釉薬を使ったタイルでそれが分かります。完全に均一なものは意外とどこか違和感があって、こういう不均一な表情を豊かに感じる感覚は、多くの人が持ちうる共通の感覚のような気がします。

6. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば、ぜひお聞かせください。

僕自身、古い木造住宅で育ったのですが、水回りに使用されていた水色の100角タイルは今でも記憶に残っています。普段意識することはありませんが、無意識にタイルに少し懐かしさを覚えるのは、このようなイメージが自分の中に残っているのかもしれません。

7. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作してみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?

色や質感などの細かなニュアンスに対する調整力が強みだと感じました。今回特にベースとなるモチーフがあったため、その再現を試みていただく中で、そのことをより強く感じました。



二俣 公一 / ケース・リアル
空間・プロダクトデザイナー。大学で建築を学び、卒業後すぐに自身の活動を開始。現在は、福岡と東京を拠点に空間設計を軸とする「ケース・ リアル (CASE-REAL)」とプロダクトデザインに特化する「二俣スタジオ (KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)」両主宰。国内外でインテリア・建築から家具・プロダクトに至るまで多岐に渡るデザインを手がける。
casereal.com

Kew Residence

year

2020

location

メルボルン, オーストラリア

architect

John Wardle Architects

method

押出成形

volume

使用面積 41m2

photographer

Photo: Gavin Green

John Wardle(ジョン・ワードル)さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

住み始めて25年が経つ我が家の、生活の変化に合わせた3度目の改修です。目的は、社交の場とリトリートスペースを設計することで、自分にとって大切で、美しく、意味のあるもののために特別な空間を作る事でした。私の書斎では、コーナー窓の配置が特徴的で、学生時代からのお気に入りであるルイス・カーンによるペンシルベニア州のフィッシャーハウスのリビングルームのウィンドウシート(窓際ベンチ)の構成を参考にしています。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか?また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

キッチン、リビングルームの炉床、2つのバスルーム、そしてパウダールームなど、もともと家のいたるところにタイルを使っています。私は美しくてオリジナルな形状、色、質感のものをいつも探しています。我が家で使用しているタイルはとても多様で、それぞれが対照的で特徴があります。素朴な仕上げから非常に洗練された仕上げまで、各スペースに様々な表情をもたらします。今回は、キッチンとパウダールームの改修にあたり、Tajimi Custom Tilesと一緒にオリジナルタイルを制作しました。

3. キッチンに使用したタイルについて

キッチンに使用しているタイルは、その形、色、仕上がりから選びました。凹んだ形状とその表面の質感が壁に深みと趣を持たせます。キッチンにはもともと、木、石、タイルなどシンプルですが美しい素材を使ってきました。落ち着いた色をセレクトすることでこれらの素材が本来持つ品質に焦点を当てることができます。それぞれの大きさ、形、仕上がりに注目し、個性的な成り立ちではあるけれど、それぞれがその空間を一つのものとしてまとめ上げてくれています。

4. パウダールームに使用したタイルについて

今回新たに改修した、1階のパウダールーム。タイルは、このスペースと組み合わせたときにとても良い効果を生んでいます。知人を通して多治見のタイルメーカーをリサーチし、様々なタイルの写真の中から見つけた、珍しいサンプルから復現したという特別なタイルからデザインの発想を得ました。製造プロセスによって、タイル一つ一つに不規則性や独自の特性が生まれ、手作りの釉薬がこれらの多くの特性をさらに強調しています。光の質でタイルの色と風合いが変わります。
また、狭いスペースで、何かに没頭する、あるいは瞑想するような空間創りに興味がありました。このタイルは、清らかでフレッシュな心落ち着く屋外にいるかのような感覚を体現してくれます。それはまるで家の中に竹林があるかのような感覚です。

5. なぜカスタムメイドのタイルを選んだのですか?

カスタムメイドのタイルにはそれぞれ独特の特徴があり、タイルメーカーの本質に触れることができるのが魅力的です。評価のプロセスと施釉方法がタイルごとに異なり、私はそれを芸術作品だと考えています。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

建築家として、手作りであることと、それを作るうえで受け継がれた伝統に魅力を感じています。特に、私はあらゆる形態の陶磁器に心惹かれます。なぜなら陶磁器には、その時代の様々な技術や文化的な実践が表現されていると思うからです。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがあればぜひお聞かせください。

John Wardle Architectsのプロジェクトでは、タイルを幅広く使用しています。中でも印象に残っているのは、メルボルン大学の音楽院のプロジェクトです。プレキャストコンクリートのファサードに、楽譜を連想させるパターンで手作りのセラミックタイルを埋め込んでいます。小さな手作りのタイルを使用して、この大きな公共の建物をより意味のあるものにするというアイデアでした。その意義は大きく、一般の人にも親しみを感じてもらえるものとなりました。

8. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

私を惹きつけるものは、まさにその個性です。それぞれのタイルの中にメーカーの個性を見ることができ、同じものは2つとありません。



John Wardle / John Wardle Architects
シドニーとメルボルンにスタジオを持つ国際的に活躍する建築設計事務所。手がけるプロジェクトは規模もタイプも様々で、国内の住居、大学の建物、美術館、大規模な商業オフィスにまで及ぶ。教育、住宅、市政デザインで国内外の受賞多数。南オーストラリア大学の非常勤教授、最近では、世界建築祭の基調演説者として国内および国際会議で定期的に講演を行っている。2020年にはオーストラリア建築家協会最高の個人賞である金メダルを受賞。
johnwardlearchitects.com




SKINCARE LOUNGE BY ORBIS

year

2020

location

東京, 日本

architect

MMA Inc.

method

押出成形

volume

使用面積 100m2

photographer

photo:Takashi Kawashima

工藤 桃子さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったショップ(or スペース、プロジェクト)を簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

スキンケア、化粧品ブランド「ORBIS」の初のフラッグシップショップです。“ここち”というキーワードがブランドにあり、“ここち”を感じる空間として土(タイル)、光、風、緑を感じる空間を作っています。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。
また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

エントランスから入って直ぐのメインエリアに使っています。
コンセプトを体現するためと、用途として水場があったため機能的にも使っています。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

ブランドカラーを再現したかったことと、手で割った有機的なタイルを作ってみたかったためです。

4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

タイルは工業製品なので、全て同じであることが前提でしたが、昔のタイルには焼きムラによって色の差が出ているものが結構あって、それが有機的でとても気に入っていました。そのように、表現としては有機的だけれど、製品としては安定しているものを作れないかと考え、ご相談しました。
また、色むらによって選別されハネられるタイルが多いことも聞き、無駄を出さないように色むらを最初から取り入れ、全てのタイルを使うということが出来ないかと考えて作ってもらいました。

5. 実際にオリジナルのタイルを作ってみて、ご感想をお聞かせください。

タイルのメーカーさんには細かいところまでケアして頂き、とても楽しくものを作れました。出来上がったタイルは今までに見たことがないもので、とても満足しています。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

工業製品という印象が強いです。安定しているけれどつまらなくなってしまうのではないかと思っていました。実際にタイルを作っている現場を見に行くとほとんど手作業で作られていて、最初のイメージからは大きく変わりました。

7. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

多治見には多様な個性を持ったメーカーがいて持っている技術の種類が多いので、オリジナル製品を開発しやすそうな環境であるという印象を持ちました。タイルは意外とメーカーによる違いが少ないという印象がある中で、表現の幅が広い多治見のタイルは差別化がしさすそうですし、より際立ったものが作れる可能性を感じました。



工藤 桃子 / MMA Inc.
多摩美術大学環境デザイン学科卒の後、工学院大学大学院藤森研究室修士課程修了。2016年にMOMOKO KUDO ARCHITECTSを設立(現MMA inc.)。建築からインテリア、展示会の設計などジャンルに関係なく空間に関わる設計を行う。近作に『波佐見の家』、『横浜トリエンナーレ 』会場構成、『SKINCARE LOUNGE BY ORBIS』など。  
momokokudo.com

Blue Bottle Coffee Hong Kong Central Cafe

year

2020

location

中環, 香港

architect

スキーマ建築計画

method

押出成形

volume

使用面積 190m2

photographer

長坂 常さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったショップ(or スペース、プロジェクト)を簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

ブルーボトルコーヒーはどの都市のどの店に行っても変わらない店づくりではなく、場所性に応じて各々のあり方を持ち、多様な表情を生み出す店舗づくりを行っています。また、各店舗によって素材や構成が様々であるのがブルーボトルコーヒーのショップ空間の特徴です。2020年6月に香港にオープンした店では、香港の街並みに多くみられるタイルを素材として用い、ブルーボトルコーヒー香港第一号店にふさわしい店舗を作ろうと思いました。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。
また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

主にメインのカウンターやベンチ、床に用い、見るだけでなく、思わず触れてしまうような、「タイルを感じられる」空間にしています。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

香港の街中で見かけるタイルは主に乾式製法で作られていて、均一な質感の印象があります。そこで、今回は伝統的な湿式製法で作ることを考えました。湿式製法で製造するタイルは、焼成時に収縮やひずみが生じ、均一な仕上がりにはなりません。
ただ、それがタイルひとつひとつに異なる表情を持たせ、特有の質感を生み出すことができ、香港にありそうでなかったカフェを作ることができると考えたからです。

4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

今回使用しているタイルは、グレーベースに白の釉薬をまだらにかけています。コンクリートで作られている既存の空間にこのタイルを用いると、タイルのまだらな白が様々なグレーを生み出し、まるで既存のコンクリートのグレーをモザイクの様に切り取ったみたいに見えます。こうして、全体として既存とタイルが調和した空間を作りました。

5. 実際にオリジナルのタイルを作ってみて、ご感想をお聞かせください。

湿式製法を用いて、グレーベースのタイルに白の釉薬を一つ一つかけ、そのかかり具合の微妙な違いで、グレーの中にも様々な表情のタイルをつくることできました。それによって、既存のコンクリートのまだらなグレーの表情と調和を図ることができたことが面白く、これはオリジナルだからこそだと思います。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

おそらく、既製品という先入観があってか今まではあまり使うことがありませんでした。でも、多治見にいって、よくよく知っていくうちに、ものづくりの奥深さや、実験ができる感じに興味を持ちました。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがあればぜひお聞かせください。

世界的に釉薬を使用する表現は、ミラノサローネなどででもよく見かけますし、最近の風潮と言えるかもしれません。きっとそれはデザイナーにとって、コントロールしながら予想のできないことが起こる、アンコントロールさへの期待なのではないかと思っています。ひょっとしたら、3Dプリンタやレンダリングなど、自分でとことん制御できるツールを得られる昨今の状況への反動なのかもしれません。どこか外に再び事故が起きるきっかけを求めているのかなとも思います。そして、僕もそういう化学実験的なものづくりが好きです。

8. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

多治見のタイルは他の国のタイルに比べて一つ一つの色や形状にまだら感があって、陶器のような日本的な独特の風合いを感じられます。
それらをより発展させ、クリエイティブに制作しようとする視点が強みだと思います。



長坂 常 / スキーマ建築計画
1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は千駄ヶ谷にオフィスを構える。家具から建築、町づくりまでスケール様々、ジャンルも幅広く手掛ける。どのサイズにおいても1/1を意識し、素材から探求し設計を行い、国内外で活動の場を広げる。既存の環境の中から新しい価値観を見出し「引き算」「知の更 新」「見えない開発」など、独自な考え方で建築家像を打ち立てる。代表作にBLUE BOTTLE COFFEE、 桑原商店 、 HAY TOKYO など。
schemata.jp