Kew Residence

year

2020

location

メルボルン, オーストラリア

architect

John Wardle Architects

method

押出成形

volume

使用面積 41m2

photographer

Photo: Gavin Green

John Wardle(ジョン・ワードル)さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

住み始めて25年が経つ我が家の、生活の変化に合わせた3度目の改修です。目的は、社交の場とリトリートスペースを設計することで、自分にとって大切で、美しく、意味のあるもののために特別な空間を作る事でした。私の書斎では、コーナー窓の配置が特徴的で、学生時代からのお気に入りであるルイス・カーンによるペンシルベニア州のフィッシャーハウスのリビングルームのウィンドウシート(窓際ベンチ)の構成を参考にしています。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか?また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

キッチン、リビングルームの炉床、2つのバスルーム、そしてパウダールームなど、もともと家のいたるところにタイルを使っています。私は美しくてオリジナルな形状、色、質感のものをいつも探しています。我が家で使用しているタイルはとても多様で、それぞれが対照的で特徴があります。素朴な仕上げから非常に洗練された仕上げまで、各スペースに様々な表情をもたらします。今回は、キッチンとパウダールームの改修にあたり、Tajimi Custom Tilesと一緒にオリジナルタイルを制作しました。

3. キッチンに使用したタイルについて

キッチンに使用しているタイルは、その形、色、仕上がりから選びました。凹んだ形状とその表面の質感が壁に深みと趣を持たせます。キッチンにはもともと、木、石、タイルなどシンプルですが美しい素材を使ってきました。落ち着いた色をセレクトすることでこれらの素材が本来持つ品質に焦点を当てることができます。それぞれの大きさ、形、仕上がりに注目し、個性的な成り立ちではあるけれど、それぞれがその空間を一つのものとしてまとめ上げてくれています。

4. パウダールームに使用したタイルについて

今回新たに改修した、1階のパウダールーム。タイルは、このスペースと組み合わせたときにとても良い効果を生んでいます。知人を通して多治見のタイルメーカーをリサーチし、様々なタイルの写真の中から見つけた、珍しいサンプルから復現したという特別なタイルからデザインの発想を得ました。製造プロセスによって、タイル一つ一つに不規則性や独自の特性が生まれ、手作りの釉薬がこれらの多くの特性をさらに強調しています。光の質でタイルの色と風合いが変わります。
また、狭いスペースで、何かに没頭する、あるいは瞑想するような空間創りに興味がありました。このタイルは、清らかでフレッシュな心落ち着く屋外にいるかのような感覚を体現してくれます。それはまるで家の中に竹林があるかのような感覚です。

5. なぜカスタムメイドのタイルを選んだのですか?

カスタムメイドのタイルにはそれぞれ独特の特徴があり、タイルメーカーの本質に触れることができるのが魅力的です。評価のプロセスと施釉方法がタイルごとに異なり、私はそれを芸術作品だと考えています。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

建築家として、手作りであることと、それを作るうえで受け継がれた伝統に魅力を感じています。特に、私はあらゆる形態の陶磁器に心惹かれます。なぜなら陶磁器には、その時代の様々な技術や文化的な実践が表現されていると思うからです。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがあればぜひお聞かせください。

John Wardle Architectsのプロジェクトでは、タイルを幅広く使用しています。中でも印象に残っているのは、メルボルン大学の音楽院のプロジェクトです。プレキャストコンクリートのファサードに、楽譜を連想させるパターンで手作りのセラミックタイルを埋め込んでいます。小さな手作りのタイルを使用して、この大きな公共の建物をより意味のあるものにするというアイデアでした。その意義は大きく、一般の人にも親しみを感じてもらえるものとなりました。

8. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

私を惹きつけるものは、まさにその個性です。それぞれのタイルの中にメーカーの個性を見ることができ、同じものは2つとありません。




John Wardle / John Wardle Architects
シドニーとメルボルンにスタジオを持つ国際的に活躍する建築設計事務所。手がけるプロジェクトは規模もタイプも様々で、国内の住居、大学の建物、美術館、大規模な商業オフィスにまで及ぶ。教育、住宅、市政デザインで国内外の受賞多数。南オーストラリア大学の非常勤教授、最近では、世界建築祭の基調演説者として国内および国際会議で定期的に講演を行っている。2020年にはオーストラリア建築家協会最高の個人賞である金メダルを受賞。
johnwardlearchitects.com




SKINCARE LOUNGE BY ORBIS

year

2020

location

東京, 日本

architect

MMA Inc.

method

押出成形

volume

使用面積 100m2

photographer

photo:Takashi Kawashima

工藤 桃子さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったショップ(or スペース、プロジェクト)を簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

スキンケア、化粧品ブランド「ORBIS」の初のフラッグシップショップです。“ここち”というキーワードがブランドにあり、“ここち”を感じる空間として土(タイル)、光、風、緑を感じる空間を作っています。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。
また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

エントランスから入って直ぐのメインエリアに使っています。
コンセプトを体現するためと、用途として水場があったため機能的にも使っています。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

ブランドカラーを再現したかったことと、手で割った有機的なタイルを作ってみたかったためです。

4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

タイルは工業製品なので、全て同じであることが前提でしたが、昔のタイルには焼きムラによって色の差が出ているものが結構あって、それが有機的でとても気に入っていました。そのように、表現としては有機的だけれど、製品としては安定しているものを作れないかと考え、ご相談しました。
また、色むらによって選別されハネられるタイルが多いことも聞き、無駄を出さないように色むらを最初から取り入れ、全てのタイルを使うということが出来ないかと考えて作ってもらいました。

5. 実際にオリジナルのタイルを作ってみて、ご感想をお聞かせください。

タイルのメーカーさんには細かいところまでケアして頂き、とても楽しくものを作れました。出来上がったタイルは今までに見たことがないもので、とても満足しています。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

工業製品という印象が強いです。安定しているけれどつまらなくなってしまうのではないかと思っていました。実際にタイルを作っている現場を見に行くとほとんど手作業で作られていて、最初のイメージからは大きく変わりました。

7. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

多治見には多様な個性を持ったメーカーがいて持っている技術の種類が多いので、オリジナル製品を開発しやすそうな環境であるという印象を持ちました。タイルは意外とメーカーによる違いが少ないという印象がある中で、表現の幅が広い多治見のタイルは差別化がしさすそうですし、より際立ったものが作れる可能性を感じました。



工藤 桃子 / MMA Inc.
多摩美術大学環境デザイン学科卒の後、工学院大学大学院藤森研究室修士課程修了。2016年にMOMOKO KUDO ARCHITECTSを設立(現MMA inc.)。建築からインテリア、展示会の設計などジャンルに関係なく空間に関わる設計を行う。近作に『波佐見の家』、『横浜トリエンナーレ 』会場構成、『SKINCARE LOUNGE BY ORBIS』など。  
momokokudo.com

Blue Bottle Coffee Hong Kong Central Cafe

year

2020

location

中環, 香港

architect

スキーマ建築計画

method

押出成形

volume

使用面積 190m2

photographer

長坂 常さんへのQ&A

1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったショップ(or スペース、プロジェクト)を簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。

ブルーボトルコーヒーはどの都市のどの店に行っても変わらない店づくりではなく、場所性に応じて各々のあり方を持ち、多様な表情を生み出す店舗づくりを行っています。また、各店舗によって素材や構成が様々であるのがブルーボトルコーヒーのショップ空間の特徴です。2020年6月に香港にオープンした店では、香港の街並みに多くみられるタイルを素材として用い、ブルーボトルコーヒー香港第一号店にふさわしい店舗を作ろうと思いました。

2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。
また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。

主にメインのカウンターやベンチ、床に用い、見るだけでなく、思わず触れてしまうような、「タイルを感じられる」空間にしています。

3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。

香港の街中で見かけるタイルは主に乾式製法で作られていて、均一な質感の印象があります。そこで、今回は伝統的な湿式製法で作ることを考えました。湿式製法で製造するタイルは、焼成時に収縮やひずみが生じ、均一な仕上がりにはなりません。
ただ、それがタイルひとつひとつに異なる表情を持たせ、特有の質感を生み出すことができ、香港にありそうでなかったカフェを作ることができると考えたからです。

4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。

今回使用しているタイルは、グレーベースに白の釉薬をまだらにかけています。コンクリートで作られている既存の空間にこのタイルを用いると、タイルのまだらな白が様々なグレーを生み出し、まるで既存のコンクリートのグレーをモザイクの様に切り取ったみたいに見えます。こうして、全体として既存とタイルが調和した空間を作りました。

5. 実際にオリジナルのタイルを作ってみて、ご感想をお聞かせください。

湿式製法を用いて、グレーベースのタイルに白の釉薬を一つ一つかけ、そのかかり具合の微妙な違いで、グレーの中にも様々な表情のタイルをつくることできました。それによって、既存のコンクリートのまだらなグレーの表情と調和を図ることができたことが面白く、これはオリジナルだからこそだと思います。

6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?

おそらく、既製品という先入観があってか今まではあまり使うことがありませんでした。でも、多治見にいって、よくよく知っていくうちに、ものづくりの奥深さや、実験ができる感じに興味を持ちました。

7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがあればぜひお聞かせください。

世界的に釉薬を使用する表現は、ミラノサローネなどででもよく見かけますし、最近の風潮と言えるかもしれません。きっとそれはデザイナーにとって、コントロールしながら予想のできないことが起こる、アンコントロールさへの期待なのではないかと思っています。ひょっとしたら、3Dプリンタやレンダリングなど、自分でとことん制御できるツールを得られる昨今の状況への反動なのかもしれません。どこか外に再び事故が起きるきっかけを求めているのかなとも思います。そして、僕もそういう化学実験的なものづくりが好きです。

8. 多治見のタイルの個性、強みといえばどのような点だと思いますか?

多治見のタイルは他の国のタイルに比べて一つ一つの色や形状にまだら感があって、陶器のような日本的な独特の風合いを感じられます。
それらをより発展させ、クリエイティブに制作しようとする視点が強みだと思います。



長坂 常/スキーマ建築計画
1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は千駄ヶ谷にオフィスを構える。家具から建築、町づくりまでスケール様々、ジャンルも幅広く手掛ける。どのサイズにおいても1/1を意識し、素材から探求し設計を行い、国内外で活動の場を広げる。既存の環境の中から新しい価値観を見出し「引き算」「知の更 新」「見えない開発」など、独自な考え方で建築家像を打ち立てる。代表作にBLUE BOTTLE COFFEE、 桑原商店 、 HAY TOKYO など。
schemata.jp