Q1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったスペースの正式名称と どのような場所かを教えてください。
東京・新宿3丁目の交差点に位置する「ALLU SHINJUKU」は、バリュエンスホールディングス株式会社が展開しているプレオウンド・ブランドショップです。 「物を、物語に」がキーワードのALLUでは、一つひとつのアイテムが歩んできた時間やそこに込められた想い、そして潜在価値を見極め、鮮度を保ったまま次の持ち主へと語り継ぐことが役割と考え、モノが廃棄されることなく、再び価値を与え、資源として循環する持続可能な社会の実現を目指して、ブランドリユースを通じた様々な取り組みを行っています。4層フロアの店内には内装材の94%に天然素材とサスティナブル素材(環境や社会課題に配慮した素材)を使用し、端材・廃材から制作した什器や家具を配置しています。
Q2. その空間内のどのような場所にTajimi Custom Tilesのタイルを使用していますか?また、さまざまな素材の中でタイルを用いることにしたのはなぜでしょうか。
3階の売り場の一部、江戸時代の呉服屋の座売りをイメージした空間で使用させて頂きました。本来は本物の畳を敷くのだと思いますが、店舗という環境下での耐久性を重視し、畳を模したタイルを敷き詰めるデザインとしました。そこではお客様は座敷に上がり、店員と会話をしながら商品を選ばれるので、お客様と商品の間に人と会話が介在し、より深いコミュニケーションを促しています。加えて、ストーリーのあるサスティナブルな素材を探していたということもあり、TCTへ相談し、溶融スラグ(一般廃棄物を溶融して冷やし固めたもの)を使用した釉薬を施した、オリジナル色のリサイクルタイルが実現しました。
Q3. タイルのデザインをする際に特にこだわったポイントは何でしょうか。畳を彷彿とさせるイグサの風合いや豊かな表情が伝わるように、自然の斑、色の配合、色の割合、サイズや艶感を、2色の釉薬を駆使して生み出した点です。テストサンプルを何度か製作いただき、他にはないオリジナルタイルを制作していただきました。
Q4. 実際に、多治見でタイルを制作された感想をお聞かせください。多治見で製造するタイルの良さとは何でしょうか。もしお気づきの点があれば合わせてお聞かせください。
こちらの要望や条件に対しての提案、素材への探究や試作などに意欲的に一緒に取り組んでいただきました。時間をかけて足を運ぶ意味がある場所であり、新しいことに挑戦ができる環境があると思いました。今回は実際にタイルをリサイクルしている工場とスラグ釉薬を施す工場に伺い、職人さんが働く製造現場を拝見させていただきました。均一に整えられた製品の中にも一つ一つ表情の豊かさがあり、タイルという素材の奥行きや可能性を感じています。TCTには、試作タイルや廃棄タイルの回収から新しいタイルの製造設備まで、近隣工場との強い信頼関係で繋がり、リサイクルするための循環設備があることが素晴らしいと感じました。
Q5. タイルという素材にはどのようなイメージを持っていますか?または、タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば教えてください。
タイルの原料となる土は、プリミティブな素材であり、とても身近な素材とも言えると思います。またタイルを生成するために必要な火と水も同じだと思います。それらによって生まれたタイルの風合いや色、施された柄は、地域ごとに異なりますし、広くは国ごとでも異なると感じています。国内外の出張などでタイルが目に留まると、国柄や文化や文明、土地の特性やそこに宿る記憶などもタイルには反映されているのではないかと思い浮かべ、そこから様々なインスピレーションを受けることがあります。
AtMa inc.
鈴木良と小山あゆみにより2013年に設立されたクリエイティブスタジオ。インテリア、プロダクト、インスタレーション、クリエイティブディレクションなどのクライアントワークと、社会課題に対するセルフプロジェクト、そして自身の運営するスペースの3つの軸を持ち、それぞれが相互に影響し合いながら、より深い探求と多角的な視点を追求している。近年はセルフプロジェクトに関する素材実験にも取り組んでいる。
atma-inc.com
edit. Nao Takegata / daily press
ALLU SHINJUKU
2024
東京, 日本
AtMa inc.
押出成形
使用面積 32m2
Photo:Kenta Hasegawa