橋村 雄一さんへのQ&A
1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。
The North Faceの店舗をメインとする新築ビルで、私たちは建築から内装まで一貫してデザインしました。狭小な敷地なので、垂直方向の伸びやかさを感じさせる建築を目指しました。
地下1階から3階までの4フロアが店舗になっていますが、階層ごとの分断を避けるために地下と1階、2階と3階をそれぞれ吹抜けでつなぎ、内装の雰囲気も2フロア1組でまとめました。地下と1階は建物全体を支える基礎として鉄筋コンクリートで造り、内装も大地に由来する漆喰とタイルを使用しています。上階は軽快な鉄骨造で、内装には木を中心に用いています。
2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。
建物の最も低い部分である地下の床にタイルを使用しています。この店舗は1階の大半が吹抜けなので、入ってすぐ見下ろすと地下の床が印象的に見えます。
3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。
決して広い面積ではありませんが、マテリアルパレットのなかでも特に重要なものの一つだったので、この場所ならではのものにしようと考えました。
4. 今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。
地下の最低部ということで「低きを流れる水」の連想から瑞々しいタイルを目指しました。ベースは白色ですが、55mm角の小さめのタイルのなかに仄かに青みがかったグレーが色ムラとして入ることで、自然なテクスチャーが生まれました。
5. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。
製法の違いによる特徴などを教えていただき、今回目指すものが表現できるまで粘り強くお付き合いいただきました。
6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?
タイルはほかとは異なる時間を生きる素材だと思います。窯のなかで時間を止められた、変化しないものの象徴です。
7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば、ぜひお聞かせください。
ロンドンに数年間住んでいましたが、帰国してみると日本の街にはタイル貼りの建物が他国と比べてとても多いことに気づきました。私たちは普段から見慣れすぎていますが、実はタイルが日本の街の風景を形成する大きな要素になっているのが興味深いです。
8. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作してみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?
叡智と経験が集積していることはもちろん、TAJIMI CUSTOM TILESのように新しい取り組みにも積極的なところだと思います。
橋村 雄一 / Sawada Hashimura
多摩美術大学 、University of East London (Dip.Arch)にて建築を学んだ後、Tony Fretton Architects 、Carmody Groarke、新素材研究所に勤務。2015年に澤田航と共同でSawada Hashimuraを設立し、建築・インテリア・アートインスタレーションなど空間にまつわる設計を中心に活動している。
sawadahashimura.jp