山本 亮介さんへのQ&A
1. 今回オリジナルタイルを導入してくださったプロジェクトを簡潔にご説明いただきつつ、空間デザインのコンセプトについてお聞かせください。
手作りキャラメルの製造販売をする「NUMBER SUGAR」の物販店舗です。
キャラメルの持つ要素を店舗空間に取り込むことで、 白い箱に包まれて陳列されるキャラメルにお客様の期待感が増すような店舗空間を目指しています。
2. その空間内のどのような場所にタイルを使用していますか。また、なぜその場所にタイルを用いることにしたのでしょうか。
空間の腰から下を埋め尽くすようにタイルを使用しています。
それにより、陳列される商品たちをより魅力的に見せるための背景となり得ると考えたからです。
3. 今回、タイルをオリジナルデザインで一から作ろうと思ったのはなぜでしょうか。
商品と同様に自然素材のある空間であって欲しいと考えて「土」から作られるタイルを使いたいと考えました。その時に、カタログからセレクトした既製のタイルを使用して空間を作るのではなく、形状や質感、色味の段階から商品との相性を考えた空間を作りたいと考えたからです。
4.今回デザインされたタイルのデザインコンセプトをお聞かせください。
タイル単体に特殊な表情は求めず、タイルが集合した時に、色むらや歪みなどの個体差が見えてくるような表情を持たせたいと思いました。
そこで、規則的なグリッドラインを水平方向にも垂直方向にも敷き詰めることで、そこに現れるタイルの歪みや表情の違いをより感じられるようにしています。
角部分には立体的に成形してから焼成したタイルを使用することで、キャラメルらしい塊としての印象を与えています。それは、手作業で切り出すため完全な矩形にはならないキャラメルの形状と通じます。
ちなみにタイルのプロポーションはキャラメルと同じ比率で決まっています
5. 実際にタイルをオリジナルで制作してみたご感想をお聞かせください。
実際に多治見でタイルの製造工場を見せて頂き、制作の過程を理解しながら、幅広く検討を進めることができました。
単純な見た目だけではなく、焼成前の成形段階からいくつかの方法を比較し、協議しながら作っていけたことで
表層的にならずにものづくりができました。
6. さまざまな建材の中で「タイル」という素材にはどのようなイメージをお持ちですか?
スペックすることで出来上がる表情が予めわかっている「製品」というイメージでした。
しかし、工夫を加えてなにかを生み出すことができる「素材」であるというイメージに変わりました。
7. タイルにまつわるパーソナルな記憶や思い出などがもしあれば、ぜひお聞かせください。
振り返ってみると今まで設計をしてきた中で、タイルを意匠の中心において考えたことはあまりありませんでした。
それはデザインされたものを借りてきている印象を持ってしまっていたからですが、今回の経験を通して「タイル」から考えるのではなく、もっと戻って「土」から考え始めるという癖がついたように思います。
8. 今回多治見でオリジナルのタイルを制作してみて、タイル産地としての多治見の個性や強みといえばどのような点だと思いますか?
多治見には様々な工法に特化した熟練の工場があり、制作したいものに合わせて様々な工場と協力ができる心強い場所だと思いました。同時に同世代の友人達が多治見にもいて、若い世代が新しいモノや場を生み出している印象がありました。
山本 亮介 / ya Inc.
2011年東京藝術大学大学院修了後、スキーマ建築計画に所属。2018年にyaを設立。建築・インテリア・商業空間・家具の設計など、空間に関わる設計活動を行う。
設計過程における場所と人との対話を重要視して空間に反映し、丁寧に筋の通った空間を組み立てていく。近作にNUMBERSUGAR、Sta.、Found MUJI展: いいものに巡り会う旅の会場デザインなど。
ya-a.jp